【ヒプマイ感想】漫画「side F.P & M」第5・6話:寂雷の孤独……麻天狼のイメージが変わる回。Fling Posseは予想外の展開へ!

2019-11-24ヒプノシスマイク

こんにちは。かれこれ5時間も同じ曲を爆音でリピートし続けている隣人の精神状態が、「うるせー」を通り越して心配になってきました。すと子です。

さて、読みっぱなしで放置していた「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」(一迅社刊「月刊コミックZERO-SUM」掲載)の感想を、徐々に書いていきたいと思います!

 

「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」hook-6・表紙
(「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」hook-6・表紙。「月刊コミックZERO-SUM」2019年7月号より)

 

前回の感想はこちら

【ヒプマイ感想】漫画「side F.P & M」第4話:飴村乱数=綾波レイ? 不意に見せた素の笑顔が可愛くて切ない。

それより前の感想はこちら

ヒプノシスマイク感想記事一覧

 

今回の記事は、5~6話がざっくり言えば麻天狼(というか寂雷)回だったので、まとめて書きますね。全体的にこんな感じでした。

  • 「伝説」=寂雷と「宝石級美形」=一二三の隣で「残りのリーマン誰だ?」と言われ、更には「あんたがそこにいると一二三が見えないじゃない」とゴミを投げられる独歩
  • リョウゴク総合病院の医師・完甘(ししかい)の罠により、予選決勝前日にしなくてもいい残業をさせられる独歩
  • 寂雷とかつての同僚・完甘、因縁の対決
  • 「Fling Posse」がまさかの○○!?

 

いやあ、なんというか、寂雷も人間だったんだな、と改めて感じる回でした(独歩は安定して不憫だった)。周囲からは完璧に見えるけど、内側には様々な葛藤や悲しみを湛えている。個人的には、麻天狼というチームの在り方に対する見方が変わった回でもありました。

そして、一転して第6話の終盤。まさかの展開がポッセを襲いましたねー。油断大敵やで。

 

前回までのあらすじ

H歴3年。伝説のチーム・The Dirty Dawg の元メンバー、飴村乱数神宮寺寂雷は、来たるディビジョン・ラップバトルに向けて、共にチームを組む仲間を探していた。

中王区の勘解由小路無花果から、予選トーナメントを勝ち抜くことを命じられている乱数は、かねてから中王区がマークしていた人物・夢野幻太郎と、ギャンブラーの有栖川帝統に接触する。彼らの事情と性格をあらかじめ調べていたため、うまく勧誘に成功し、チーム「Fling Posse」を結成。ギャンブルを通して彼らと親睦を深め合ったその時間は、無花果に反発しながらも自らの目的のために動いている乱数に、束の間の笑顔を与えた。

 

一方で、変人を好む寂雷は、スキルよりも個性を重視し、ホストの伊弉冉一二三とサラリーマンの観音坂独歩を勧誘。一二三を狙うストーカーを寂雷が治癒したことに恩義を感じている二人は、誘いを承諾。チーム「麻天狼」がここに結成する。メンバー同士の親睦を深めるために、一二三が設けた酒の席にお呼ばれした寂雷だったが、極度の酒癖の悪さが祟り、目が覚めた時には飲んでいた時の記憶がすっぽ抜け、辺りには寂雷によって潰された一二三や独歩が転がっていたのだった。一二三と独歩は、聖人のような寂雷の意外な弱点を知り、彼に二度と酒を飲ますまいと誓う。

そしていよいよ、ラップバトルの予選トーナメントが開幕した――。

 

改めて、寂雷強すぎない?

予選が始まったことで、これまであやふやだったラップバトルのルールが明記されていました。

  • 制限時間15分
  • 精神的・肉体的な機能停止、10カウントダウン・ギブアップ・30秒以上の場外は失格
  • 時間内により多くのメンバーがサバイブしていたチームの勝利

 

そして寂雷の能力がこちら。

  • ラップの対象を癒すことができる ←医者だしまあ分かる
  • 自分自身のダメージを癒すことができる ←分かる
  • メンバーの攻撃力増強 ←!?

 

頭の中で色んな情報がない交ぜになってるんですが、これ前にも出てましたっけ? 寂雷、こんなこと出来るの?

自他治療とドーピングの両方可能って。麻天狼に先攻渡したらオシマイじゃないですか…。まず寂雷のラップでメンバーの攻撃力を底上げして、次の相手ターンでダメージを受けたとしても、自ターンで寂雷による治癒ラップで治してもらえばいいし。相手にとっては厄介極まりないチームですね。

自分自身を治癒できるから、最悪寂雷だけは15分間サバイブし続けることが可能ですよね。1ヴァースで彼を卒倒させられるほどの使い手って、なかなかいないだろうし。乱数がドラマ・トラック「Know Your Enemy side F.P VS M」にて、寂雷を指して「ゾンビ」と言っていたのはこのことだったのかな? 寂雷最強じゃん。

 

天才ゆえの孤独と、寂雷にとっての「仲間」

「通り過ぎた日々が 遠い過去が追って来る」

hook-6の表紙のコピーの通り、5・6話では寂雷に私怨を抱く医師・完甘が、麻天狼の本選進出を阻むために(というか寂雷に嫌がらせをするために)、立場を利用して、医療器具を取り扱う会社で働く独歩を追い詰め、それに立腹した寂雷が完甘との決着をつける……という話でした。

 

ヒプマイ・完甘
(新キャラ・完甘。「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」hook-5より)

 

この完甘先生、初登場のコマでは人の好さそうな笑顔を浮かべていますが、他はゲス顔。独歩が勤める会社の得意先(病院)の医師という立場で、機器の故障を理由に、独歩を呼び出します。

当然やるべき事として、機器の交換を行う独歩。しかし、その交換された機器も初めから故障しており、完甘はご立腹、「独歩の顔も見たくない」と主張。ラップバトルの予選決勝前日だというのに、独歩は自分の代理で完甘のもとに向かった社員の代わりに、膨大な量の残業をこなさなければならなくなります。

もちろんこれは、ラップバトルを好機と見なして寂雷への私怨を晴らそうとする、完甘の罠。独歩は会社員として、ちゃんとミスなく自分の仕事をやってますよ!

 

予選会期中に、機器トラブルを理由に度々呼び出され、更には決勝前日のチームでの打ち合わせも、残業のため参加できなくなった独歩。彼からの事情説明により、寂雷はかつての同僚・完甘が、自分への恨みを晴らそうとしていること。そして関係のない独歩がその復讐に巻き込まれていることを知り、リョウゴクへ車を飛ばします。

 

凡人が天才に感じる「壁」

寂雷先生、何したの?となるところですけど。

私怨の理由自体は、しょーもないというか、完甘の虚栄心が招いた自滅を寂雷のせいにしているだけ。言わば「逆恨み」でした。

かつて完甘は、寂雷と同じ病院に勤めていました。若くして非凡な手術の腕を誇っていた完甘と寂雷。しかし医師たちの評判の中で、「天才」として名が上がるのは寂雷だけ。医師として、なまじ卓越した技術を持っていたからこそ、「天才」と比較され、あるいは自分自身でも比較してしまい、完甘は寂雷に劣等感を抱いていました。

周囲からの評価を高め、何より劣等感を拭いたいがために、完甘は難度のかなり高い手術に挑みます。無謀ともいえる挑戦の結果は、完甘の完敗。彼のミスを寂雷が尻拭いする形で手術は成功。

自身の失敗を隠蔽したくて、手術関係者たちに金銭を配り、「あの時ミスしたのは、サポート役の寂雷の方だった」と証言するように仕向けます。しかし日々の人望の差か、誰も嘘の証言をする者はなく、皆が寂雷の味方に。寂雷はただ一言、「完甘先生……残念です」と。そして完甘は病院を追われることとなりました。

 

寂雷の静かな目線。「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」hook-5より
(この眼、時と場合によっては興奮する。「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」hook-5より)

 

まあ、こんな眼で見下ろされたら立ち直れないよね(あるいは別の何かに目覚める)。自業自得とはいえ。

その後リョウゴク総合病院で働いているわけですが、この度満を持して寂雷への復讐に挑みました。違法マイクを使い、憎悪によって強度を増したラップで寂雷を攻撃。しかし寂雷の反撃を喰らい、倒れてしまいます。

機器トラブルに関する独歩の冤罪を晴らすため、今回の件の首謀者は自分だった、と完甘に認めさせようと念を押す寂雷に、とうとう完甘は観念して、心情を吐露。

 

またこの角度か……
俺はお前のその見下ろしてくる視線が大嫌いだった……
ちくしょう…
俺はどうやってもお前には勝てねぇのか……

※「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」hook-6より

 

この言葉を聞いた寂雷の、ショックを受けたような、傷ついたような表情、いいですねー。ほんとこの漫画、絵が巧みですわ。

見下ろしているつもりは、寂雷にはなかったんでしょうね。そういう視線で人間の行いや世の中の流れを眺めるのが、彼の通常運転。でも彼の横に並ぼうと躍起になっている人間にとって、その視線が自分に向けられるのは痛い。なぜなら寂雷の視線は、彼我の距離を否応なしに感じさせるから。あと、本当は大したことのない自分自身を見抜かれているような気もするし。

 

そうして「天才」との差を強烈に感じさせられてしまい、劣等感が煽られることで、「天才」になれない側の人間は壁を作り、卑屈になる。完甘は姑息だし、卑劣だし、寂雷に畏怖も抱いていたけど、「天才」と勝負しようと思っただけ凄いと思う。

 

んで、そうやって凡人が築いてしまった壁が、「天才」に孤独を感じさせるんですよね。

寂雷自身は、医師としての完甘の腕を認めていました。バトル後は、寂雷のラップ攻撃を受けてなお自力で立ち上がった完甘の力量も賞賛していた(ちなみにこの時、相手を起こそうとして差し伸べた寂雷の手を、完甘は振り払っています)。彼がリョウゴク総合病院で腕をふるっていることもちゃんとチェックしていたし。

 

寂雷は完甘と、医師としての腕を争わせるつもりなど、毛頭なかったんでしょうね。もともと争いが嫌いなお人だし。寂雷は誰かと切磋琢磨しなくても、「患者を救うため」という意識だけで、ひとりで上達できるんだと思う。もっとも、彼に勝負の対象として見られたい、対等な立場で切磋琢磨し合いたいと思う人間にとって、それは存在を無視されるにも等しいことなんだろうが。

 

立ち去る時に寂雷が完甘にかけた言葉は、きっと完甘には届かないんだろうな、と思いました。

 

孤独だからこそ、寂雷には「仲間」が必要

独歩のことで完甘のもとにやって来た寂雷の表情は、私にとって意外なものでした。いつもの涼しげな顔に、相手への侮蔑の色を多少滲ませながら、やって来るものかと思ってた。

 

寂雷・「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」hook-6より
(激おこ寂雷。「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」hook-6より)

 

めっちゃ怒ってるやん……。めっちゃ仲間を大事にしてるやん……。

先生、意外と「チーム」というものに誰よりこだわってるというか、大切にしている人なのかなーと思いました。思えば、殺し屋時代は知らないけれども、過去編のコミカライズでも衢(よつつじ)くんいう助手がいるし、乱数と「空寂ポッセ」を組んでからも楽しそうだったし。乱数が裏でバリバリ単独行動をやってるから気付かなかったけど、先生結構誰かと一緒にいますよね。

何より、TDD解散について思いを馳せる時、乱数との関係破綻について未練たっぷりみたいだし。

 

そして、完甘との決着をつけた後、寂雷は「今回の件は私が原因だった」と独歩に謝罪の電話を入れるんですよね。だから、今やってる残業はしなくていい、あとのことは自分に任せて、と。そこで独歩が言った台詞がこれです。

 

一度頼まれた仕事を途中で投げたくないんです。
それが例え理不尽な理由で来たものでも……!

※「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」hook-6より

 

寂雷、救われたような眼をしていましたね。独歩の中では、この残業はただのとばっちりじゃなくて、既に「自分の仕事」になっている。発端は寂雷の過去だったとは言え、独歩は独歩で、彼のサラリーマンとしての矜持をもって、それに取り組んでいる。

恩だの何だのとは全く関わりのないところで、自分の選んだ生き方をちゃんと全うしようと努力している独歩の姿は、尊敬に値するものだし、天才を全く意識せずに自身の生き方に没頭する人間こそが、天才に孤独感を与えることなく対等に並べる存在になるのかな、と思いました。

完甘とのやり取りの後だからこそ、独歩との電話は寂雷に安心感を与えたでしょうね。自分に壁を作らないでいてくれる存在もいる、と。

 

以前「DEATH RESPECT」を聴いた時に、M.T.C(理鶯パート)が「我が軍のトリオが撃破」と歌っていたのに対し、麻天狼(一二三・独歩パート)が「両サイドに破天荒な暴れん坊」と歌っていたのが印象的でした。

M.T.Cはあくまで対等な個が三つ並んでいるトリオであり、一方麻天狼は、寂雷+一二三・独歩、というイメージを、歌詞から思い浮かべました。まあ、「DEATH RESPECT」を聴く前からシンジュク=宗教のイメージがありましたからね(笑)

 

しかし、今回の話を読むと、麻天狼に対する印象を改めざるを得ないなーと感じました。寂雷も、一二三と独歩の存在に助けられている。別に教祖様ではない。

 

謎のチーム「The Dirty Doubts」が登場

6話目の後半は、一転してシブヤのお話です。

3つの出版社の編集者に続けて別作品の原稿を提出するという、鬼のような仕事っぷりを見せる幻太郎のスマホに、「バトル予選について打ち合わせしたいから事務所集合(=暇だから遊びに来て)」と乱数から連絡が。

そこで、今さら思い出したようにラジカセを肩に乗せて歩いている帝統と合流し、事務所へ向かいます。

 

乱数に知らされた予選一回戦の相手は、その名も「The Dirty Doubts」(ダーティーダウト)。なんでも、「The Dirty Dawg」の再来と呼ばれているらしい。

 

The Dirty Doubts・「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」hook-6
(どこかで見たような。「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- side F.P & M」hook-6より)

 

パチモン感が凄い。

「相当やるチーム」と聞き、特訓をしたり対策を練ったりしないのか、と問う幻太郎に、「ガラじゃねーだろ」「僕らなら絶対勝てるよ~」と笑う二人。

ん? 嫌なフラグが見える……。

そして期待を裏切らず、Fling Posse、シブヤ・ディビジョン選抜の予選初戦敗退――!!

 

えっ? 何これ。どうすんの?? 中王区関係者枠で出場すんの???

ちょっと次の話読みます。

 

感想まとめ

えっ、ポッセ、え????

だから、慢心は危険だよって言ったじゃーん(言ってない)。

そして今回の完甘編は、コロコロ変わる寂雷の表情が見られてすごく良かったですー。あと、攻撃の時にすらりと伸びた裸の腕って寂雷のだよね? 35歳の成人男子の左腕があんな美しいなんて……ほんと麗しいわ先生。

にしても、「遠い過去が追って来る」って、殺し屋時代の過去じゃなくて良かったね。それはそれで見たいですけどもね。殺し屋時代に殺めた人間の遺族が復讐してくる話、いつかやってくれないかしら。

すと子

 

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