【ネタバレ・感想】「トーナメント」(2018)~トーナメントもデス・ゲームもしていない~
こんにちは。タイトルとパッケージに騙されて毎度毎度クソ映画をつかまされています。すと子です。
今回は、レンタルビデオ店の新作コーナーで気になって借りた映画「トーナメント」(2018)を観ました。その感想レポです。

いいねいいねー、デス・ゲームものは大好物ですよー!
ということで、ワクワクしながら観ました。
作品情報と概要
作品情報
- 監督・製作・脚本:ジュリアス・ラムゼイ(「ウォーキング・デッド」など)
- 出演:アレックス・エッソー/パーラ・ヘイニー=ジャーディン/ディラン・マクティー/ウォード・ホートン/アンドリュー・ローゼンバーグ
- 公開年:2017(日本公開は2018)
- 製作:アメリカ
- 上映時間:93分
- 原題:Midnighters(←ここ重要)
概要
銀行員のリンジーとその夫ジェフは、大晦日のパーティーの帰り道、見知らぬ男性を車で轢いてしまう。
事故を隠蔽することにした夫婦はいったん帰宅し、男性の死体を埋めようとするが、男性の財布から、夫婦の家の住所が記されたメモが見つかる。
この男性はいったい何者なのか? 自分たちに何の用があったのか?
混乱する夫婦の家に、妻リンジーの妹・ハンナが帰宅する。夫婦の知らぬところで息を吹き返していた男性が、車庫に立ち寄ったハンナに襲い掛かる。恐怖に駆られたハンナは思わず、男性をピストルで射殺してしまう。
翌朝、スミスと名乗る刑事が夫婦の家に訪れた。隠蔽した事故の真相を知っているらしいこの男の訪問によって、夫婦と妹は疑心暗鬼のデス・ゲームへと身を投じることに……。
以下、がっつりネタバレなのでご注意を。
あらすじ・ネタバレ
まずは邦題詐欺とパッケージ詐欺について
邦題詐欺もいい加減にしろや~
まずこの映画、トーナメント方式、いわゆる明確な勝ち抜き形式での殺し合いは行っておりません。
ていうか殺し合ってないし。
原題が「Midnighters」だそうで。日本語訳しづらい原題なら、もうそのまんまカタカナ読みでいいよ。
パッケージも詐欺だなんて、ひどくない?
- 「大晦日の夜」 ←事故が起きたのは大晦日の夜だけど、デス・ゲームというか疑心暗鬼が始まったのは1月1日の日中やで~
- 「罪人たちで殺し合う」 ←飲酒運転とスケベ心のせいで男性を轢いた上に隠蔽を持ちかけたジェフはクズ野郎だが、言うほど罪人はいないし、殺し合ってもいない
- パッケージ上半分の三人の男女 ←中央の男性は分かるけど、両隣の女性だれやねん。出てたっけ、こんな人たち。
ここまで内容と乖離するとか、そんなことある???
各登場人物の正体と思惑について
車庫での男性の死は、圧倒的にジェフのクズ野郎が元凶かと思われましたが、ハンナは「すべて自分のせいだ」と泣くばかり。
姉のリンジーが理由を聞くと、曰く「自分は以前から誰かに付け狙われていたのだ」と。
実は自分の元彼は、投資詐欺グループの一員だったが仲間と仲違いをして殺された。自分はその元彼からバッグを預かっていて、奴らはそれを狙って、この男を寄越してきたのだろう、と。
その預かったというバッグを夫婦が調べてみると、ガラクタの中から寂れたロッジの荷物の預り証が。元彼は、死ぬ前にハンナに何かを遺したらしいのです。
じゃあこのロッジに行ってみよう、ということで、警察対応のためにリンジーだけ家に残って、ジェフとハンナが二人で預かり物を取りに行きました。そこでリンジーのもとに登場するのが、スミスと名乗る刑事です。
スミス刑事の正体と思惑
なんと、死んだと思われていたハンナの元彼、リチャードでした。
リチャードは、ハンナが持っている預り証(=自分が持ち逃げした大金を再びこの手にするために必要なもの)を求めて、彼女が居候する姉夫婦の家に、仲間を遣わしました。その仲間こそが、ジェフが轢いた男性でした。
(どういう経緯でかは明かされていませんが、)仲間を轢き殺されたことを知ったリチャードは、夫婦宅に上がりこんでリンジーを拘束し、何度も顔を殴って、死体の居場所を吐かせようとします。
スミス刑事=リチャードの思惑は、ロッジに預けた大金を再び我が物にすることと、仲間を死なせた夫婦に報復することでした。
夫・ジェフの正体と思惑
ジェフは分かりやすいクズ野郎です。以下、クズだと思った点。
- 飲酒運転する
- 飲酒運転かつ夜道を走らせているのに、途中でリンジーにスケベしようとしてうっかり運転への注意が散漫になる→人を轢く
- 轢いた上に、隠蔽しようとする
- やたらと連帯責任を強調する
- 大黒柱のリンジーに引け目を感じながらも、言葉とプライドだけは一人前なヒモ
- 亡くなった男性の財布を漁って現金を頂戴する(結果、住所の記されたメモを見つける)
リチャードがリンジーを痛めつけている時に、「なんであんなクズ野郎と結婚した?」と聞きますが、大いに同意します。
自分の妻がそんな目に遭っているとはつゆ知らず、ジェフはハンナと二人で遠くのロッジへと車を飛ばします。
そして、ハンナが預り証と交換してきたのが、5万ドルもの大金!
これにはジェフも大喜びです。「リンジーが1年働いても稼げない額だぞ」「俺の手柄にするからな」などと謎のことを言い出し、しまいには「リンジーに渡すの、やめにしないか……。いや、これはお前の気持ちを試しただけだぞ、ハンナ」と嬉しさのあまり錯乱する始末。
二人は5万ドルを持ち帰りますが、家には負傷したリンジーと、縄で椅子に縛りつけられているリチャード。
リチャードの隙をついて彼をぶん殴ったリンジーが、今度は逆に彼を拘束したわけですね。リンジー強い。
5万ドルの話を聞いたリンジーは、ジェフにある提案を持ちかけられます。
「全てを知っているあいつ(=リチャード)を殺して、車庫の死体と一緒に、どこかに埋めよう。そして、5万ドルは、居候のハンナに独り立ちの資金として渡そう」
ひとつめの提案は本音でしょう。しかし、ジェフはリチャードだけでなく、大金を手に入れるのに邪魔なハンナも殺そうと思っていました。
だから、「リチャードを殺す際には、止めに入ってくるかもしれないハンナをどこかに閉じ込めておこう」と言っておきながら、彼女をリチャードの部屋に一緒に閉じ込める、という謎の行動をとったわけですね。同じ部屋にいた方が、殺しやすいものね。
ジェフの思惑は、棚ぼたで手に入った5万ドルを、妻のリンジーと二人だけのものにすることでした。
妹・ハンナの正体と思惑
さあ、義兄のジェフと一緒にロッジに行き、5万ドルを持ち帰ったハンナ。
姉夫婦の家に戻ると、死んだと思っていた恋人のリチャードが拘束されておりました。
「この縄をほどいてくれ。そしてあの金を使って、二人で世界を周ろう」
リチャードの甘い言葉に揺れながらも、やはり姉・リンジーを裏切ることもできない。そもそもリチャードは自分の姉を殴ったらしいし。
姉に相談してくる、と言って部屋を出たハンナは、リチャードが夫婦(主にリンジー)によって拷問まがいのことをされている間、何もすることもできません。非行少女の自分と違って全うな仕事に就いている姉を巻き込んだ、という罪悪感があるからね。
そして、リチャードを始末しようという結論に至った夫婦は、ハンナに袋をかぶせ、両手を縛って部屋に閉じ込めます。夫婦に裏切られたと思い混乱したハンナは、リチャードに言われるがままに彼の拘束を解いてしまいました。
そして、最初から大金を独り占めするつもりだったリチャードにより、首を絞めて殺されてしまいました……。
ハンナの思惑は、作中でいろいろ揺れ動いたのでしょうが、最期はリチャードを信じ、あの金(※後述)で彼とどこかへ逃げることだったのでしょう。
妻・リンジーの正体と思惑
リンジーの正体。おそらく、本作でいちばんの謎でしょう。
作中では、彼女の職業は銀行員だとありましたが、やたら十二星座占いに詳しいリチャード曰く、
- 正直者で積極的なやぎ座
- すさまじい野心家
らしいです。そして、リチャードの背後をとる際の気配の殺し方も、常人のそれとは思えませんし、リチャードを拘束した後の拷問のやり方も、とても手馴れたものでした(人体の弱い部分をよく知っている)。
さて、リンジーの思惑ですが、彼女は妹のハンナの部屋で、あの預り証を再び見つけます。5万ドルは持ち帰られたはずなのに。ハンナに理由を聞くと、「すべての元凶だから、記念にとっておこうと思って」という返事が。
そのとき、賢いリンジーは察したのでしょう。ハンナとジェフが持ち帰った5万ドルは、本物の荷物ではない、と。
ロッジに行ったのは二人ですが、実際に預り証を持ってロッジに入り、受付で荷物と交換してもらうという行動をとったのは、ハンナです。ジェフは運転席でじっと待っていただけです。
これも作中では明らかにされていないのですが、恐らく5万ドルなど比較にならないほどの大金が入ったバッグを前にしたハンナは、馬鹿正直にジェフと二人でこれを持ち帰るよりも、いったん5万ドルを偽の荷物として用意してジェフに見せ、後日また預り証を持って、今度は一人で大金を持ち帰る方を選んだのでしょう。
ですから、「大金」の額が5万ドルだと最初から最後まで信じきっていたのは、ジェフ一人だけだったのです。
もっとも、ハンナは本物の大金を再び取りに行くより先に、リチャードによって殺されてしまいましたが……。
ジェフがハンナを殺そうとし、ハンナが最期の最期にリチャードを選んだ(あれは夫婦のやり方もまずかったのですが)のに対し、リンジーはジェフもハンナも、大事な家族だと思っています。
ですから、リンジーの思惑は、唯一の邪魔者であるリチャードを排除した後に、家族で本物の大金を手に入れることでした。
結末
ハンナを殺そうというジェフの企みに気づき、激昂したリンジーは、男の死体がある車庫にて、夫と取っ組み合いになります。
そこで、拘束を解かれたリチャードが、背後に油断していたジェフを殺害。とうとうリチャードとリンジーの一騎打ちに。
ピストルも奪われ、絶体絶命かと思われたリンジーですが、車庫のシャッターを開けるという謎の行動に。
すると車庫の外には、パトカーと警官が!
夫の企みを悟ったリンジーが、あらかじめ警察に通報していたのですね。
車庫の中には、倒れて動かないジェフと、その遺体の側で同じく倒れている妻のリンジー、そしてただ一人立っている、加害者と思われる男の手にはピストルが。
リチャードは警官によって射殺され、リンジーは唯一の生存者となりました。
その晩、リンジーはハンナの部屋にあった預り証を持って、あの寂れたロッジまでパトカーで送ってもらいます。
預り証と交換したバッグの中には……数え切れないほどの札束が。
それを部屋で眺めて、ご満悦の表情を浮かべるリンジーなのでした。
感想
「これ、いつデス・ゲーム始まるんだろう……。開始30分を超えているのに、まだトーナメントの第一回戦も始まっていない……」
そういう不安を抱えながらも、ハラハラする演出や、「お、そうくるか?」といった意外性のおかげで、退屈はせずに観られました。
ただ、ストーリーが行き当たりばったりな感じがして、なんだかうまいこと枠に収まっていない迷路のような印象を受けました。
ジェフのクズっぷりに最初はイライラしましたが、一周回って面白いキャラでした。
あと、血にこだわりを感じました。事故の隠蔽のために、血で汚れてしまった車庫を夫婦が掃除する場面があるのですが、時間が経って凝固した血液をフォークで剥がしたり、血に濡れた雑巾を絞ったときに、バケツの中で何かの液体と化学反応する様など。鉄臭さがこちらまで伝わってきそうな描写で、いい意味で気持ち悪かったです。
それにしても、パッケージも信用できないこんな世の中じゃ……。
レビューサイトをチェックせずにDVDを借りる。今まではこの、直感と衝動に任せたレンタルの仕方が気に入っていたのですが、そろそろ事前チェックを検討しようかな。
すと子